目についた記事を、その時々に書き込むつもりです。
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     軍服はみな丸眼鏡レノンの忌   長崎市  中村 誠示

ジョン・レノンの命日はまた太平洋戦争開戦の日でもある。平和運動に身を挺(てい)したレノンと兵士たちが同じ眼鏡をかけている悲しさ。
                              【 正木ゆう子 選 】


   冬うららふぐりゆたかに猫過ぎぬ   豊橋市  河合  清 

晴れた冬の日、雄猫が通り過ぎた。みごとなふぐりを見たところにおかしみがある。「冬うらら」が「ふぐり」によく似合う。        【 小澤  實 選


  髭(ひげ)を剃る鏡に写るわが顔の八十路をすぎて母に似てきし
                           東京都  軽部 和三

年齢が加わると性別など超越してくる。娘が父に似てきたり、息子が母に似てきたり。隠されていたものが浮上する。ああ自分はまぎれなく母の子だったんだ。重い感慨。                     【 小池  光 選 】 



 夕つ陽はいま胎内にともりゐむまぐはひ終へし鳩そらを飛ぶ
                          明石市  中條 節男

原初の時代から、鳥は常に人間にとって生命力の指標だった。日本神話の造物主いざなぎ・いざなみの二神に婚(とつ)ぎのわざを教えたのも、鶺鴒(せきれい)であったという。この一首、そうした原初の情念を思わせる。交接を終わった雌鳩が明石海峡、淡路島を眼下にして夕映えの空を歓喜に燃えながら乱舞している                   【 岡野 弘彦 選 】

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読まざりし「魔の山」を老いて病む日々にとどこほりつつ読みをはりけり
                           松戸市  関根 賢人

若いときに読もう読もうとして読まないでしまった書物が誰にでもあると思う。
老境になりしかも病を得たとき、思い出してはそれを手にする。読みはじめたがすらすら読めるものでもなかった。しかし何とか読了し、人生の宿題の一つを果たした。こういう読書というものがある。こころうたれる。【 小池 光 選 】 

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 父と母次々入浴介助して体中から玉の汗噴く
                        泉佐野市 河合 陽子

高齢者の入浴介助。 一人分だけでも大変なのに父と母を次々に介助するのは重労働である。体力を使うし、精神的にも疲れる。だが作者は俯(うつむ)いてはいない。体から吹き出る汗を「玉の汗」と詠んでいるところがじつに健やかに感じられる。父母と作者の身も心も清める汗。汗の美しさに感銘を受けた。                         【 栗木 京子 選 】

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 幾つかのユリの蕾は幾つかのユリとなりたり花瓶に生きて
                        さいたま市  小野 剛志
  
蕾から花となり、人の目を楽しませてくれるユリ。が、花を咲かせるのは、本来は命のリレーのためだ。そこから途切れている事を知らないままの美しさしは、空しくもあり、また切なくもある。 リズミカルな上の句がユリの無邪気さを、倒置法で言いさしの結句がその運命の残酷さを、巧みに表している。
                                【俵 万智 選 】



   冬銀河無数の中に好きな星   安曇野市  曽根原幸人

誰にでも好きな星があるはず。 いかに宇宙の謎が科学で解明されても、この「好き」だけは自分だけのもの。           【 宇多 喜代子 選 】



   夜は夜のひかり離さず薄原    大垣市  大西 誠一
日の光を受けて輝いていた薄(すすき)原が夕刻には淡く光り、そのまま夜に入る。「夜の光」は月光と解して当然だろうが、無月であっても光は見えてくる。                             【宇多 喜代子選】



  おおつぶの雨にうたれてわらいだす何に勝とうとしてたんだろう
                          東京都  加藤あんぷ

ずぶ濡れの爽快(そうかい)感というものがある。ここまでやられると笑いだしたくなっちゃう。勝つとか負けるとか、何を恐れていたのか。時には傘を捨てることが大事なのかも。                   【 小池  光 選 】



 穴の開いたアルマイト弁当まん中に梅干し入れて行きし学校
                           京都市  高橋 雅雄

7月7日は日中戦争の始まった日で梅干一つの日の丸弁当を持たされた。その日が誕生日の私は、さみしかった。        【 岡野 弘彦 選 】


  抜け道のある林檎園に少年の友を呼びゐる甲高き声
                          弘前市  竹内 正史

少年達の秘密の遊び場になっているのだろう。「抜け道のある」という端的な描写で、イメージがぐっと広がってくる。 ボーイソプラノと林檎園の取り合わせが、繊細な美しさを醸し出す一首だ。            【俵
 万智 選 】


   干柿の影を纏(まと)いてミシン踏む   東京都  松永 京子

自分では気付かないだろうから、そんな人を見たのだろう。おそらく夕日。たぶん縁側。足踏みミシンを踏んでいた人は、もしかしたら作者の母上かもしれない。                           【 正木 ゆう子 選 】


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