目についた記事を、その時々に書き込むつもりです。
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   春眠の続きのやうに母逝けり   横浜市  我妻 幸男

最期はこのようにと、誰もがねがうところ。「春眠の続きのやう」に、おだやかな母上との永別の様子が言い尽くされている。     【 宇多 喜代子 選 】


   すれ違ふは白き手ばかり藤の昼   川越市  益子さとし

藤の花が咲く晩春の昼、歩いていると何人かと擦れ違った。みな白い手の持ち主ばかり。その中には死者も混じっているのではないか。
                               【 小澤  實 選 】



   ふらここに大人が乗れば寂しくなる   秋田市  中村 栄一

そもそも郷愁というものが寂しさと分かち難いのか。あるいはぶらんこに乗ってみたくなるようなとき、人は屈託を抱えているものなのか。あの無重力の感覚のせいか。                          【 正木 ゆう子 選 】


   はだかりて天地一体大桜   千葉市  中村 重雄

天地の間にはだかり立つ桜大樹。青天と、幾年ものあいだここに立ち、桜の時間を支えてきた大地。そこを一つにして春ごとに花が咲く。見事な景だ。
                              【 宇多 喜代子 選 】



   幾万の兵死なしめしさくらかな   埼玉県  小林  実

かつて「桜のように散れ」と教育されて幾万もの兵士たちが死んでいったことを端的に詠っている。花は無心。しかし、人間の関わりようによっては罪深いものにもなる。                       【 矢島 渚男 選 】



   菜の花を試し切りしてチャンバラす   長野県  橋都 良子

山村の子供たちが棒か何かでチャンバラごっこ。道端の菜の花をまずバッサリと試し切りしたという微笑ましい情景である。       【 矢島 渚男 選 】



   さくら散る昭和のことはもう言はず   神奈川県  石原美枝子

一読了解の後、諸々を考えさせる句だ。「さくら散る昭和」とも読めようが、ここは上五で切る。そのことで、句意に繋がる感慨は増す。
                             【 宇多 喜代子 選 】


   こんな日は簡単にして花菜漬   東大阪市  渡辺美智子

何を。もちろん夕食を。こんな日とはどんな日だろう。一日出掛けていた日。気の張る行事のあった日。それとも。           【 正木ゆう子 選 】


   わがゆけば集まつてくる花の精   松山市  久保  栞

桜は別格の花なので、幻想的に詠まないのが普通だが、それを逆手にとった。俳句における耽美(たんび)は、これ位徹底すると案外成功する。 
                               【 正木ゆう子 選 】


   わが書架に悪書潜ます花曇   東京都  草部  宏
  
人前で読むのもはばかれる悪書に深く慰められることもある。花曇という季語が、内面のほのぐらさとよく映り合っているのだ。    【 小澤  實 選 】



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