目についた記事を、その時々に書き込むつもりです。
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  悪さして辛夷の蕾おしひらき雄しべ雌しべの密会のぞく
                           札幌市  吉沢美紀子

思春期の思い出だろうか。いかにも「悪さ」だが気が利いている。密会をのぞき見るトキメキは、密会そのものに勝る。たとえ辛夷(こぶし)の蕾(つぼみ)とはいえ。いや、蕾なればこそ。               【 小池  光 選 】


  くくくくと笑ひこらへてゐるごとし五月の蟇(ひき)は雨ふる庭に
                        高萩市  工藤 要五郎

ヒキガエルの声はさまざまに歌に登場するが、この句はとびきりユニーク。彼はおかしくっておかしくって堪(たま)らぬのだよ、この世が。だってそうじゃないか。なるほど。                          【 小池  光 選 】


   一汁のありて万全豆の飯   秋田市  中村 栄一

一汁一菜というが、豆飯には豆が入っているから、汁があれば充分。ほかの副食物はいらない。大げさに「万全」と言ったのが面白い。【矢島 渚男 選】


 「おとうさまお疲れさま」と選挙カー坂道あへぐわれに手を振る
                           町田市  風間 吉富

あんたにおとうさまと呼ばれる筋合いはない。人間にはプライドというものがある。票を減らしてるだけだ。 最近の憂うべき風潮に「さま」の氾濫がある。患者様とか。                          【 小池  光 選 】


   ふらここや前と後ろがあるばかり   鹿沼市  阿久津 照子 

「ふらここ」はブランコのこと。こう謂われてみると本当にそうだなと思う。
前後に揺れて横には揺れない。どこか人生にも似ているようである。
                               【 矢島 渚男 選 】


   弓矢なき謂(いわ)れを語り武具飾る   福岡市  酒井 大輔

いま五月人形は屋内に飾るが、本来は家の前に棚を作って兜(かぶと)や武具類を幟(のぼり)などと立てたもの。 そこに弓と矢が無くなった訳を説明しているのだろう。 「実は昔ね・・・・・・」。       【 矢島 渚男 選 】


   冷奴(ひややっこ)自給10円上がりけり   青梅市  増田  正
貨幣の句は古びやすいので取らないのだが、この「10円」は切実。まだまだ安いという嘆きとかすかな喜び。奴の脇にはコップ酒がある。【小澤 實 選】



   新緑の青青青と山のぼる   秋田市  赤田 重夫

初夏の山の変化をいきいきと捉えた句。幾日かかかって、新緑が裾野から山腹へ、さらに頂上へとのぼってゆく。         【 宇多 喜代子 選 】



   万緑を鬱陶しいと思ふ日も   鶴岡市  広瀬  弘

あたりに満ち満ちる樹木の緑。気持ちのいいその緑が、生成のエネルギーを発散させる。その気に圧倒されそうな日の気分か。  【 宇多 喜代子 選 】


   メーデー歌歌ふ腹筋鍛へねば   和泉市  橋本 幹夫

メーデーの祭典に出席して、歌っているのだが、腹筋がゆるむようだ。本来は労働者の祭であったが、それがイベント化していることを、この腹筋がものがたっている。                         【 小澤  實 選 】



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