目についた記事を、その時々に書き込むつもりです。
蟋蟀のごとき男を連れて来し 市川市 杉森 日出夫
この男がどのような立場の男かをあれこれ想像する。 娘の恋人か、句会初参加の男か。山口青邨の < こほろぎのこの一徹の貌を見よ > を思い出させ、この男、妙に思惟深そうにも思われる。 【 宇多 喜代子 選 】
この男がどのような立場の男かをあれこれ想像する。 娘の恋人か、句会初参加の男か。山口青邨の < こほろぎのこの一徹の貌を見よ > を思い出させ、この男、妙に思惟深そうにも思われる。 【 宇多 喜代子 選 】
秋祭生きよ生きよと遠太鼓 三次市 錦 武志
心身を奮い立たせる太鼓の響き。たとえ遠くからであっても、生きる勇気を与えてくれる。 【 宇多 喜代子 選 】
心身を奮い立たせる太鼓の響き。たとえ遠くからであっても、生きる勇気を与えてくれる。 【 宇多 喜代子 選 】
盲目の少女にピンクのブラウスが似合うと言ってもいいのだろうか
さいたま市 小野 剛志
似合うよと伝えても、本人はそれを確認できない。そこに生まれる葛藤は、相手への思いやりからうまれたもの。言ってあげて、いいと思う。
【 俵 万智 選 】
さいたま市 小野 剛志
似合うよと伝えても、本人はそれを確認できない。そこに生まれる葛藤は、相手への思いやりからうまれたもの。言ってあげて、いいと思う。
【 俵 万智 選 】
少しだけ先に行く人走馬灯 茨木市 瀬戸 順治
身内にしろ知人にしろ、見返るのはいずれも同時代を生きた人。相前後して生まれ、共に生き、相前後して去ってゆく。走馬灯が視覚的にも、比喩的にも効いている。 【 正木 ゆう子 選 】
身内にしろ知人にしろ、見返るのはいずれも同時代を生きた人。相前後して生まれ、共に生き、相前後して去ってゆく。走馬灯が視覚的にも、比喩的にも効いている。 【 正木 ゆう子 選 】
かなかなや洗って返す孫二人 鶴岡市 広瀬 弘
「孫は詠むな」と指導する俳人もいるが、かくも楽しい句がある。 夏休みに預かった孫を風呂に入れてよく洗って親元に返す。愛情を絶って、即物的に詠んだのがいい。 【 小澤 實 選 】
「孫は詠むな」と指導する俳人もいるが、かくも楽しい句がある。 夏休みに預かった孫を風呂に入れてよく洗って親元に返す。愛情を絶って、即物的に詠んだのがいい。 【 小澤 實 選 】
あはあはとまこと可憐なごまの花明治の母は海を見ず逝く
下妻市 神郡 貢
胡麻の花と言われても すぐに思いうかばぬほど眼につかない、その花のように可憐でひっそりと一生を終った明治の母。思えば私の母もこういう人だった。
【 岡野 弘彦 選 】
下妻市 神郡 貢
胡麻の花と言われても すぐに思いうかばぬほど眼につかない、その花のように可憐でひっそりと一生を終った明治の母。思えば私の母もこういう人だった。
【 岡野 弘彦 選 】
よおく見ておけといふよに尻尾上げ観光馬車の馬は糞する
匝瑳市 椎名 昭雄
一読爆笑して同感。あらゆる動物は排泄するが、馬は独特。まるで糞するのを誇示するかのごとし。これがなぜか目をそらすわけにもいかず、妙に一部始終を見てしまう。 【 小池 光 選 】
匝瑳市 椎名 昭雄
一読爆笑して同感。あらゆる動物は排泄するが、馬は独特。まるで糞するのを誇示するかのごとし。これがなぜか目をそらすわけにもいかず、妙に一部始終を見てしまう。 【 小池 光 選 】
秋刀魚焼きなんだかんだと生きて来し 東京都 白木 静子
もうもうと煙を上げて、さんまを焼いている。何だかんだと言いながらも、楽しくしたたかに生きてきた自分を確認しているのだ。 【 小澤 實 選 】
もうもうと煙を上げて、さんまを焼いている。何だかんだと言いながらも、楽しくしたたかに生きてきた自分を確認しているのだ。 【 小澤 實 選 】
行く夏の疎遠の筆を嚙みゐたり 大分市 高柳 和弘
平素の無沙汰を詫びて残暑見舞いなどを書こうとしているところだろうか。筆を嚙むは硬くなった筆先をほぐすこと。練達な句である。 【 矢島 渚男 選 】
平素の無沙汰を詫びて残暑見舞いなどを書こうとしているところだろうか。筆を嚙むは硬くなった筆先をほぐすこと。練達な句である。 【 矢島 渚男 選 】
諍へるたつた二匹の目高かな 大分市 阿南 宙女
狭い水槽の中、仲良くすれば幸せなのに。でもこの二匹、誰かに似ている。仲良くすればいいものを、諍(いさか)ってばかりのどこかの夫婦。
【 正木 ゆう子 選 】
狭い水槽の中、仲良くすれば幸せなのに。でもこの二匹、誰かに似ている。仲良くすればいいものを、諍(いさか)ってばかりのどこかの夫婦。
【 正木 ゆう子 選 】