目についた記事を、その時々に書き込むつもりです。
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  あこがれは奈良西ノ京に住まむこと齢かさねて捨てきれずをり
                         龍ヶ崎市  安藤 善夫 
時代によって西ノ京の所在も変るがこれは薬師寺のある奈良市西ノ京町、古都の面影の濃く残る地への憧憬である。       【 岡野 弘彦 選 】


  木枯らしを電子レンジで暖めて女房の留守の夜に頂く
                          山口市  久保田麗二

レトルトカレーなどでなく、「木枯らし」を電子レンジで暖める。どんな具合になるのかしら。すべてのインスタント食品は木枯らし化された食べ物である。なるほど。                          【 小池  光 選 】



  飛び乗りし電車はなんと各停でしょうがないだろじたばたしても
                           茨木市  瀬戸 順治

よくありそうな場面。かかることのみならず、人生じたばたしてもしょうがない。せめて行き先同じでよかったのだ。            【 小池  光 選 】



   枯野から枯野に消ゆる獣かな   西東京市  杉本とらを

「獣」には野生、家畜と多様の種類があるが、この獣は冬を穴や葎(むぐら)の中で過ごす野生のものであろう。または幻想か。鑑賞の自由をもたらす句。                            【 宇多 喜代子 選 】



   養生と鰯ばかりを食はさるる    大分市  阿南 宙女

これぞ此あるかなである。食わされるほうの気持ちも、食わすほうの気持ちもともにワカル。これを贅沢というか、悲痛というか。   【 宇多 喜代子 選 】



   函館の町を歩けば啄木の像より外に知る人はなし
                        横須賀市  竹山 繁治

函館の旅の印象を気の利いたエスプリで詠んだ。応募ハガキにちゃんと啄木式に三行書きしてあるところが憎い。函館の青柳町こそかなしけれ / 友の恋歌 / 矢ぐるまの花。                   【 小池  光 選 】



  大嫌いなその人のことを夜更けより考え続けて夕まぐれかな  
                           町田市  宮沢 洋子

一日中大嫌いなあいつのことかんがえて不愉快で悶々としている。 まったくばかみたい。でも人間ってこんなものかも。        【 小池  光 選 】



   赤い靴履いて来たネと夫の言ふ初デートの日我は覚えず
                          三原市  藤井 悦子

実際に赤い靴だったのか、あるいは唄の中から出てきた少女のように可憐に見えたのか。どちらにしても素敵な思い出。       【 栗木 京子 選 】



   迷惑かとも思いつつ賀状書く    所沢市  阿部  至

この方へは迷惑かななどと考えながら年賀状を書く。誰にでもよくある思いを率直に句にしている。                   【 矢島 渚男 選 】


   猫老いてわたしも老いて炬燵出す    高崎市  門倉 まさる

軽い句だが、老いを詠みながら幸福感に溢れている。「出す」がいい。そろそろ出そうか、と猫と話し合ったようで、微笑ましい。    【 正木 ゆう子 選 】


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