目についた記事を、その時々に書き込むつもりです。
[184]  [185]  [186]  [187]  [188]  [189]  [190]  [191]  [192]  [193]  [194
    平成を励ます如し昭和の日   松戸市  倉林 高次

平成昭和という時代を擬人化して、少しも不自然でない。もろもろの困難を乗り越えた昭和が、後輩である平成の苦闘を見守り、励ましているのだ。昭和の日は4月29日。                 【 正木 ゆう子 選 】


   一日中我は老人のどけしや   名取市  里村  直

被災地の人だが、随分泰然として居られる。「一日中」と言って可笑しみもある。老人は常に老人であるのが当たり前なのでそれが面白いのだ。災害の中でも老人らしく長閑にしていようというのだろうか。 【 矢島 渚男 選 】



   生きている丑三つ時の春夜かな   塩釜市  桜井 洋嘉

真夜中に生きていることを実感する。このとき、誰があの惨事を想像しただろう。3月11日当日、地震発生前の投句。 「いきている」は瞬時の事実でしかないのだ。                       【宇多 喜代子 選】



   土と水太陽があり耕せり    大和郡山市  宮本陶生

耕しに必要なものとして、土と水と太陽とを揚げる。自然の恵みを得て耕している。 この三つがあっても耕すことができない、原発周辺の地の苦しみを思わざるをえない。                    【 小澤  實 選  】


  あれはもう含み笑ひといふやうな白木蓮の大きな莟
                        青梅市  諸井 末男

開花を間近にひかえ、ぎりぎりまで膨らんだ白木蓮の莟(つぼみ)。「含み笑ひ」という比喩が冴える。思い切り笑う瞬間、それが開花だ。「莟」と「含」の字形の相似も面白い。                  【 俵  万智 選 】


  垂直に蓄えてきし知識さえ地震(ない)に書籍とともに崩れる
                          松戸市  東   洋

「垂直に蓄えてきし知識」は知識偏重になりがちな私たち現代人の驕りなのだろう。地震によって知識の脆(もろ)さが露見したのだ。【 栗木 京子 選 】


  級長の役を今日よりするといふわが童よ飯はこぼすな
                     大岡 博(おおおか ひろし)  

子どもは大人の種子。すでにその人のおもかげを宿す。歌人の大岡博は詩人の大岡信(まこと)の父。ここに描かれているのは小学校に入学したときの大岡信である。級長になることをひそかに喜びながら一言いいたい。ご飯はこぼさずに食べなさい。             【 四季 ・ 長谷川  櫂 選 】



   どの鳶も右廻りなり春の空    いわき市  斉藤 恵子  

たしかにそうだ。長閑な時間にこそ見える春の鳶の生態。春の輪は大きい。3月9日の消印での投句。作者は如何かと案じる。 【宇多 喜代子 選】

   ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

   海へ向きはた山に向き麦を踏む   丹波市  土田  勝

畝(うね)をたてて麦を蒔き、早春に麦踏をする。往ったり来たりを繰り返す。これこそがこの国の麦踏。               【 宇多 喜代子 選 】

   ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

今週は、この「麦踏」の句が一番好きでした。震災が無ければ、鳶が飛び回るのどかな景色が今日も続いていただろうに・・・と、心が塞ぎます。


   赤子とはいのちそのもの春の雪   東広島市  児山 順子

どんな時であっても、赤ちゃんの存在には、かけがえのない力を感じさせる。うかうかと「いのち」と書くと軽くなるが、この「いのちそのもの」にはそれがなく、祈りに感じられる。                   【 宇多 喜代子 選 】

   ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

   被災地で生まれし嬰(やや)に春を見た  
                        寝屋川市  大西 嘉弘

被災地で赤ちゃんが生まれた。未来への希望が一つ灯された。【矢島 選】


  非常食のつめたき粥をわが口にあたためて母に口移すなり
                           旭 市  山田 純子

地震の被害やその影響による停電によって、我々の生活は大きく変わった。年老いて体力の無くなった母のための介護に、最新の心をつくす様子が伝わってくる。                         【 岡野 弘彦 選 】

   ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 乾パンに咽(むせ)びて水を流し込む今日を生き抜くそれだけのため
                           岩手県  小田 わか

岩手県在住の作者。東日本大震災によってライフラインが断たれ、非常食の乾パンを食べて命をつないでいる。 「今日を生き抜く」の切実さの前に、頭を垂れるのみ。                     【 栗木 京子 選 】

   ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
  
  望郷を言はざる孫が三日ほど帰りくるとふ地震(なゐ)ゆりし後
                          群馬県  真庭 義夫

重い被災地の体験を詠んだ歌ではないが、この若者の気持ちよく分かる気がする。そして孫を待つおいの心の動きもまた。     【 岡野 弘彦 選 】



カレンダー
02 2025/03 04
S M T W T F S
1
2 3 4 5 6 7 8
9 10 11 12 13 14 15
16 17 18 19 20 21 22
23 24 25 26 27 28 29
30 31
ブログ内検索
最新コメント
[12/31 越中之助]
[12/31 越中之助]
[12/10 ?]
[10/30 読売読者]
[09/06 榎丸 文弘]
最新トラックバック
バーコード
フリーエリア
ゲイ無料総合サイト
カウンター