目についた記事を、その時々に書き込むつもりです。
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  自転車の少年が坂上がりゆく浮かしし尻を左右に振りて
                   横浜市  岡部 重喜

こういう自転車の漕ぎ方は若者の特権である。 だんだんサドルからお尻が上がらなくなるものだし、まして左右に振れない。 たちまち追い抜かされて感慨にふける。                       【 小池  光 選 】


  冬桜つまらなさうに咲きゐたる   小原 啄葉(おばら たくよう)

鎌倉の東慶寺の庭に一本の冬桜がある。さびしげな白い花が寒風の空にまばらにひらく。咲いてみたものの、ほかの花や木の芽があるわけではなく、鳥たちも恋の歌をさえずらない。「なーんだ、つまんない」という少女のようだというのだ。                    【 四季 ・ 長谷川  櫂 選 】


   夜のペットショップは少し月に浮く   日野市  菊池 由美

人口の光に包まれた爬虫類(はちゅうるい)や熱帯魚の水槽からの発想だろうか。あるいは売買される生き物への情が作らせた句かもしれない。都会の片隅の景と月光だけの静かな世界。           【 正木 ゆう子 選 】



   人と生まれ猫と生まれて夜の長し   天理市  松田 吉憲

飼い主とペットではあるが、たまたま人であり猫であるにすぎないという気もする。寄り添って秋の夜長をすごす幸福。         【 正木 ゆう子 選 】



  津軽野の訛(なまり)なつかし千空忌   さいたま市  佐々木 力

この欄の選者であった成田千空さんは青森県五所川原市に住んだ温厚重厚な津軽人だった。「寒夕焼けに焼き亡ぼさん癌の身は」が壮絶な絶唱。忌日は11月17日である。                【 矢島 渚男 選 】

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【 参 照 】
   われ死なば癌も死ぬべし鰯雲(いわしぐも)  並木 赤平
        
この句も切実だ。私も胃癌で胃の腑の4分の3を切除した。「鰯雲」の季語が明るく、上五中七の「暗」を一転させた見事な一行詩。
           【 角川
 春樹 選  魂の一行詩 ( 07.07.31 ) 】


  函館の青柳町に憧れし十五の頃の懐かしきかな
                         佐世保市  金谷 美保子

啄木の「函館の青柳町こそかなしけれ / 友の恋歌 / 矢車の花」への返し歌。一首の歌に引かれて、遠い函館・青柳町を夢見た青春の思い出。 韻律に無理のない歌。                   【 小池  光 選 】  


最後に書き添えられている「韻律に無理のない歌」の一言は、選者の最近の傾向に対する自戒の言葉なのでしょうか? 

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  万が一の私のための九千と九百九十九の私   
       東京都  加藤
あんぷ  【 ’10.5.3 小池  光 選 】


余談ですが、ここでは「九千と」の「と」を省いたほうがよかったのでは・・・と 思いました。


  空からは新しき雪ばかりかな   大迫 弘昭 (おおさこ ひろあき)

空から降る雪も地上に積もっている雪も雪は雪。多くの人がそう思って雪を眺めている。だからこそというべきか、この句をよむとはっとする。このささやかな驚きをもたらすのが言葉の力であり、その驚きは世界と私たちを親密にする 
                          【 四季 ・ 長谷川  櫂 選 】


   金木犀ほろほろと散る夜の庭わがねむる間もちりてしあらむ
                          東京都  長田 裕子

桜の夜半の落花は馬場あき子さんに秀歌がある。こちらは木犀(もくせい)で、季節と気分に違いがある。 秋冷の夜気の中、 金色の糸を引くように夜すがら散りつぐ花の幻想。                【 岡野 弘彦 選 】


   泡立草どうよ日本の居心地は   仙台市  斉藤 栄子

渡来植物であるセイタカアワダチソウに、日本での居心地を尋ねている。津波、原発事故とつづいたこの国への嘆きが託されていよう。【小澤  實 選】


   さやけしや池の水さへ息止めて   東京都  松永 京子

「さやけし」は「爽やか」と同義の秋の季語だが、よりいっそう澄み切った印象を受けるのは音のせいか。水が息を止めるとは、繊細かつ大胆な把握である。                             【 正木 ゆう子 選 】



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