目についた記事を、その時々に書き込むつもりです。
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   この恋は本物なのか蕗を剝く   美唄市  井上 裕之   

始まったばかりの恋を、止めるか続けるか、自問している。蕗(ふき)の皮を剝(む)きつつ悩んでいるのだ。若々しい悩みと具体的な動作とが取り合わされた。蕗の青い匂いも立つ。              【 小澤  實 選 】

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悩んでいるのは男性ですよね?



   回りみな傷つけそうな破片めくイヤリングして若き娘の過ぐ
                          東京都  小菅 暢子

キラキラ輝いてはいるけれど、鋭利なところが、ちょっと怖いようなイヤリング。まぶしさと残酷さ。それは、若い娘の持つイメージそのものである。
                               【 俵  万智 選 】

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作者 久々のヒット作だと思う。弱者(老い)になってこその感性。 感慨。


   麦星やまた逢ふ日までとふ別れ   前橋市  豊嶋 秋生

「また逢う日まで」を歌った尾崎紀世彦さんが亡くなった。別れの曲ではあったが、また逢う日までとは、未来ある若さゆえの台詞だったのだと、今になって気付く。                           【 正木 ゆう子 選 】


   階段のだんだんねむくなる素足   館林市  松本 みゆき

二階の寝室へ向かうところと解釈。 多分パジャマ姿。 省略されている分、眠さはクローズアップされて、いかにも眠たい。      【 正木 ゆう子 選 】


   蝸牛お前もやはりはぐれたか   東京都  山田 勇三郎

<青蛙おのれもペンキぬりたてか 芥川我鬼>を踏んでの作。カタツムリののろい歩みが人生を思わせる。 どこかで、この私も道を間違えて、はぐれてしまったのだよ。                      【 矢島 渚男 選 】



   薔薇に触れ少年あたり窺えり   横浜市  我妻 幸男

美しく咲いたバラに触れながら、少年があたりの様子を窺っている。垣根だろうか。見知らぬ家の花を折るには勇気がいる。花がバラだけに暗示するものが豊かだ。                         【 矢島 渚男 選 】


   奥蝦夷の山懐の余花明り   稚内市  藤林 正則

余花は遅咲きの夏の桜。北海道の桜は遅く、高地の花はさらに遅れるだろう。その山中の桜を「奥蝦夷の山懐の」と重厚に詠っている。 
                               【 矢島 渚男 選 】


  孑孒(ぼうふら)を食べる仕事の金魚かな  大和市  杉浦 正章 

池か手水(ちょうず)鉢か。金魚がボウフラを食べるように飼われているという愉快な句。ところで「孑孒」という漢字、象形性にすぐれて味わいがある。
                               【 矢島 渚男 選 】

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初めてボウフラという漢字に接し、感動しています。

【難解語辞典】によれば
(形動 タリ) ①孤立するさま ②一人ぬきんでたさま ③小さいさま。
(名)ボウフラ。


   緑陰を出てわが影の新しき   神栖市  篠崎 照子

暑さを凌(しの)ぐために「緑陰」に入った。しばらくして出た。先ほどとは別人のように気分を新たにして。               【 宇多 喜代子 選 】



   針の穴通る菫の種なりし   東京都  松永 恭子  

小さな種は他にもあるだろうが、わざわざ蒔くものでもないために、あまり見ることもない菫(すみれ)の種を詠んだ句は初見。「針の穴」によって、小ささが具体的に伝わる。                     【 正木 ゆう子 選 】


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