目についた記事を、その時々に書き込むつもりです。
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  水色は清貧の色湖(うみ)に虹   山口 美沙(やまぐち みさ)

『清貧の思想』という本がベストセラーになったのは昔の話。当時の日本人は もはや清貧ではなくても、清貧への憧れはもっていた。さて今の日本人はどうか。清貧ときいて思い浮かぶ色は?作者の答えは水色。透明に近い色である。             【 '12.7.19 四季 ・ 長谷川  櫂 選 】



   蚤つぶす音の聞えた昭和かな   下妻市  神郡  貢

昭和はノミを潰す音が聞こえた時代だったという。薄暗がりのプチという小さな音。いまの、ことに都会は無機質な騒音が氾濫している。どちらがいいか。「聞えた」の口語と古典的な「かな」の同居も面白い。 【 矢島 渚男 選 】



   入道雲恐ろしいいつもより恐ろしい   川口市  広田 絹子

入道雲を恐ろしく感じてしまうのに共感する。 雲の姿に原爆のキノコ雲、 加えて原子力発電所の水素爆発の煙が重なってしまう。 そういう時代を 作者もぼくも生きている。                 【 小澤  實 選 】



 戦傷の義眼のままに焼かれたる
    義父(ちち)は死ぬまで戦をかたらず  佐世保市  近藤 福代

上の句のきびしさが、一首をつらぬいている。白じろと崩れる遺骨の中に、 義眼だけがぎらりと光っているような気がして、下の句の内容を確かなものにする。                            【 岡野 弘彦 選 】



   敗戦ははや死語なるか大正に生まれさびしき兵たりしわれ
                        富士市  影山 辰男

私も敢えて終戦としか言わない世を恥ずかしいと思い、「さびしき兵」とは思わないが「悲しい兵」だったと思う。そして悲運の死をとげた死者の為に祈る。 
                               【 岡野 弘彦 選 】



   病室の妹の名に様とあるなぜだか遠き人に思へり
                      国分寺市  越前 春生

入院患者の名前を記したプレート。見慣れた妹の名前が 「○○様」とあることへの違和感。それが日常と離れた妹の現在と重なる。【 俵 万智 選 】



   すくすくと青田は青をひろげけり   流山市  久我 渓霞

田植え後の苗が日ごとに根を張り、たくましく育ってゆく。その様子を「すくすく」という平凡な擬態語で表現した構えの大きな句。 【 宇多 喜代子 選 】



   田水張りこの世の平ら見てをりぬ   前橋市  豊嶋 和夫

田植え前日あたりの、水を張ったばかりの田だろう。水面の平らを「この世の平ら」と眺めた句。久我氏の句と同じく、景の大きさ、言葉ののびやかな処がいい。                          【 宇多 喜代子 選 】



   修司忌や湯呑にひとり酒ついで   富士見市  阿部 泰夫

戦後の世に短く激しく燃え尽きた寺山修司を偲んで湯呑で独酌する。
 「便所より青空見えて啄木忌」。 少年時代の句作から出発した青森県三沢市出身の詩人・劇作家。              【 矢島 渚男 選 】



   梅の実の見え始めたり昨日今日   酒田市  柴田 和子

初めて梅の実に気付く日というのが毎年あって、それは、近づいてくる夏を 始めて意識する日でもある。季節とともにある生活の幸せ。
                               【 正木 ゆう子 選 】


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