目についた記事を、その時々に書き込むつもりです。
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  原爆の怒りをすらや、みづからのあやまちの如く言ふに おどろく
                     岡野 弘彦 ( おかの ひろひこ )

広島の原爆慰霊碑には「過ちは繰(くり)返しませぬから」と刻んである。この主語は誰か。原爆を投下したのはアメリカ人だが、その責任も日本人が負っているように読める。この曖昧さが日米外交の原点にある。日本人の優しさか腑甲斐(ふがい)なさか。   【 '12.8.6 四季 ・ 長谷川  櫂 選 】                

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作者は明らかに「おどろいている」。 ここで問題を提起した筆者が、それ (日本人の曖昧さ)が「優しさ」なのか「腑甲斐なさ」なのか、自身の考えを明確に示さないのは不親切です。


  八十すぎてわれは苦しむ。生肌絶ち人を殺しき。若き二十に
                     岡野 弘彦 ( おかの ひろひこ )

ショッキングな歌である。 「生肌(きはだ)断ち」という古語が生々しい。
従軍中の事実というより、戦後の日本人全体の悔恨の思いではないか。
民族の記憶や想念を歌人はわがこととして詠む。
                   【 '12.8.1 四季 ・ 長谷川  櫂 選 】


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本当に、「戦後の日本人全体の悔恨の思い」なのでしょうか?


  庭隅に殺しし蛇の執(しふ)ねくもわれをうかがふ気配残れり
                        稲城市  山口 佳紀

今週は推敲を考える三首。いま一息せまるものがほしい。たとえば
 「庭隅に殺したる蛇執ねくもわれをうかがふ気配うごけり」。
二句切れと結句で引き締める。

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  海鳥の鳴くを聞きつつモルヒネの効かぬ体に瞬時まどろむ
                      佐世保市 金谷 美穂子

海近い病院での療養生活。気になるのは下の句「体に瞬時」の部分。
助詞「は」か、、「も」か。「体もしばしまどろむ」がよい。

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  しとしとと雨降る夜になにものか我が身食いたるものみな生きる
                       東京都  鈴木 ひろみ

毎週、数多く投稿してこられるが推敲が足りない。殊に下の句が粗略。
 「しとしとと雨降る夜にしのびよりわが血を吸いて去るものは何」。
推敲は必ず声に出してする。

   ――――――――――――――――― 【 岡野 弘彦 選 】



   どつと汗噴いて会いたき人と会う   茨木市  瀬戸 順治

会いたき人と会って、緊張の汗を噴くのは理屈。それを逆にして、汗を噴いて会うということになれば、人間を描く詩である。     【 小澤  實 選 】



   裸電球火取虫火取虫   秋田市  中村 栄一

灯った裸電球に虫が来て、電球の薄いガラスにぶつかる。熱のために死に落ちるものもある。ガラスにぶつかる虫のかそけき音が続く。 【 小澤  實 選 】



   金曜の夜がもつとも夏らしく   宇陀市  泉尾 武則

炎天・海山・植物など、夏らしい風物は他にいくらでもある。にもかかわらず、金曜の夜が一番と断定。ナイター中継・ビール・網戸・扇風機など思い浮かべれば、納得。                    【 正木 ゆう子 選 】


   お隣の小学校の合奏が小生意気にもビートルズなり
                       調布市  菊川 直樹

作者は青春時代にビートルズに出会って心酔したのだろう。そんな世代から見ると、小学生のうちから当然のようにビートルズに親しむのは まさに小生意気。共感を呼ぶ歌。                    【 栗木 京子 選 】

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「小生意気」という言葉には悪意があって嫌いです。そして、「まさに小生意気」と共感する選者にも疑問を感じます。


   蛇飛び降り丸呑み卵割りにけり   富山市  藤島 光一

蛇が、呑んだ鳥の卵を割って、消化するために地に身を投げているわけだ。蛇の胴のふくらみが消えて、「カシャッ」と音がするよう。 【 小澤  實 選 】



   戦える国あり茅(ち)の輪くぐる日も   笹沼 郁夫

和やかに茅の輪を潜っている今も、地上のどこかに戦っている国もある。
シリア、アフガニスタン。ヒトという生物は、同種類と闘争することなしには生きられないのか。                       【 矢島 渚男 選 】



  だるまさんがころんだをする幼らは風がいちばん動かぬ日なり
                         東京都  小菅 暢子 

ぴたっと動きを止める子どもたち。彼らと風を比べる発想が新鮮だ。じっとりと風も動かぬ一日。それでも遊び続ける子どもエネルギーが、まぶしく伝わってくる。                             【 俵  万智 選 】

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「風がいちばん動かぬ日」と聞いて、夏の暑い盛りを連想しました。
7月のこの時期に、この作品を投稿したところで、実体験に基づく感動が
伝わってこないように思います。小菅氏はいつも高い評価を得ていますが、
私にはカノジョの立ち居地が分からず、それが不満です。



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