目についた記事を、その時々に書き込むつもりです。
生涯の写真を始末して涼し 一宮市 太田 康直
溜まるばかりの写真。 思いきり良く、その始末を終えた作者。 その感慨と 気分を、「涼し」に託している。 【 宇多 喜代子 選 】
溜まるばかりの写真。 思いきり良く、その始末を終えた作者。 その感慨と 気分を、「涼し」に託している。 【 宇多 喜代子 選 】
猫ひとつ起きて農家の総昼寝 那須烏山市 水野 信
「総鼾(いびき)」は辞書に見えるから、「総昼寝」があってもいいわけだが、初見の面白い言葉である。誰にも相手をしてもらえない猫が一匹。
【 正木 ゆう子 選 】
「総鼾(いびき)」は辞書に見えるから、「総昼寝」があってもいいわけだが、初見の面白い言葉である。誰にも相手をしてもらえない猫が一匹。
【 正木 ゆう子 選 】
95歳は昨日だったか11人の曾孫の似顔絵よせ書きとどく
浜松市 仲村 正男
忘れていた95歳の誕生日を、11人の曾孫の寄せ書きの似顔絵によって知ったという、まことに悠悠たるうらやましい歌。 【 岡野 弘彦 選 】
浜松市 仲村 正男
忘れていた95歳の誕生日を、11人の曾孫の寄せ書きの似顔絵によって知ったという、まことに悠悠たるうらやましい歌。 【 岡野 弘彦 選 】
蚊か蚤か南京虫か目が覚めた 堺 利彦
堺利彦は社会主義者で、何度も投獄され、退屈しのぎに俳句をつくった。句意はそのままで、獄中には蚊と蚤(のみ)と南京虫(なんきんむし)がいて あんまり痒いので目が覚めた、と。悠長なもんですな。さすが社会主義者の親玉です。めそめそせず、悠々と観察している。句集には自分の肖像写真を入れ、序文は荒畑寒村、中扉に宇野重吉の絵が入っている。昔の左翼は文武両道、古武士の風格があった。
『豊多摩と巣鴨 二度目の巣鴨』 (昭和50年・素面の会)
【 '12.8.16 週刊新潮 新々句歌歳時記 嵐山 光三郎 】
堺利彦は社会主義者で、何度も投獄され、退屈しのぎに俳句をつくった。句意はそのままで、獄中には蚊と蚤(のみ)と南京虫(なんきんむし)がいて あんまり痒いので目が覚めた、と。悠長なもんですな。さすが社会主義者の親玉です。めそめそせず、悠々と観察している。句集には自分の肖像写真を入れ、序文は荒畑寒村、中扉に宇野重吉の絵が入っている。昔の左翼は文武両道、古武士の風格があった。
『豊多摩と巣鴨 二度目の巣鴨』 (昭和50年・素面の会)
【 '12.8.16 週刊新潮 新々句歌歳時記 嵐山 光三郎 】
父祖たちの汗染む綱や山車を曳く 大牟田市 鹿子生 憲二
原句「百年」だったが「父祖たち」と直した。 この方が具体的だからである。山車を曳(ひ)きながら祖先たちの汗が染み込んでいる綱と感じ、伝統を 引き継ぐ思いが湧く。 【 矢島 渚男 選 】
原句「百年」だったが「父祖たち」と直した。 この方が具体的だからである。山車を曳(ひ)きながら祖先たちの汗が染み込んでいる綱と感じ、伝統を 引き継ぐ思いが湧く。 【 矢島 渚男 選 】
蟇転ぶ月の光の強すぎて 東京都 山内 健治
蟇(ひき)が転ぶ場面は、実際にも句としても見たことがない。虚構だとしても面白い句である。月光が強すぎるからだとする断定も個性的。
【 正木 ゆう子 選 】
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意外かもしれませんが、私は、この句が好きです。
蟇(ひき)が転ぶ場面は、実際にも句としても見たことがない。虚構だとしても面白い句である。月光が強すぎるからだとする断定も個性的。
【 正木 ゆう子 選 】
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意外かもしれませんが、私は、この句が好きです。
蟇まばたきしたり楸邨忌 武蔵野市 藤巻 治郎
加藤楸邨に < 蟇(ひきがえる)誰かものいへ声かぎり > がある。
この蟇を呼び出したのか。たまたま目蓋を上下させた蟇がいたのか。虚にも実にも読める句。楸邨忌は7月3日。 【 宇多 喜代子 選 】
加藤楸邨に < 蟇(ひきがえる)誰かものいへ声かぎり > がある。
この蟇を呼び出したのか。たまたま目蓋を上下させた蟇がいたのか。虚にも実にも読める句。楸邨忌は7月3日。 【 宇多 喜代子 選 】
天瓜粉母にゆばりを飛ばしけり 岡山市 浜 悦造
汗疹予防のために、子の全身に天瓜粉(てんかふん)を打っている。その最中、子がおしっこを母へ飛ばした。母は驚きつつも子の健康を喜んでいる。
【 小澤 實 選 】
汗疹予防のために、子の全身に天瓜粉(てんかふん)を打っている。その最中、子がおしっこを母へ飛ばした。母は驚きつつも子の健康を喜んでいる。
【 小澤 實 選 】
星のごとく七夕の夜にまみええむか亡き夫の星またたきたまえ
四街道市 出浦 章子
奈良 ・ 平安の時代には星の歌をはじめ天体を歌ったものが多い。 最近は 科学の進歩により、宇宙全体が身近になった。 この一首、91歳の作者の みずみずしい叙情。 【 岡野 弘彦 選 】
四街道市 出浦 章子
奈良 ・ 平安の時代には星の歌をはじめ天体を歌ったものが多い。 最近は 科学の進歩により、宇宙全体が身近になった。 この一首、91歳の作者の みずみずしい叙情。 【 岡野 弘彦 選 】
流れきし星を蔵しているごとく桔梗のつぼみ色づきて来ぬ
東京都 小菅 暢子
「星」は、桔梗(ききょう)の形状からの楽しい連想だろうか。が、それだけでない生命の神秘を感じさせるところが魅力だ。 【 俵 万智 選 】
東京都 小菅 暢子
「星」は、桔梗(ききょう)の形状からの楽しい連想だろうか。が、それだけでない生命の神秘を感じさせるところが魅力だ。 【 俵 万智 選 】