目についた記事を、その時々に書き込むつもりです。
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   天守閣蜂一匹の天下かな   増田  守 ( ますだ まもる )

天守閣から城下を眺める。城主でなくても爽快な気分だろう。そのとき目の前の空を一匹の蜂が飛んでゆく。 そこは翅(はね)を持つものの自由さ。
天下広しといえども ここには自分一匹しかいないというふうなのだ。その蜂の気概を句にした。       【 '13.03.26 四季 ・ 長谷川  櫂 選 】


  大山祇のまろき柱ぞ美しき六百年前の槍鉋(やりがんな)のわざ
                          今治市  藤原 守幸

日本の古代信仰は不思議だ。瀬戸内海の小島の大三島(おおみしま)に山の神が祭られ、信州穂高の山頂に海の神が祭られる。
大山祇(おおやまつみ)の神は、仁徳天皇の代に百済から渡来したという。14世紀社殿再建。 水軍の信仰が篤かった。     【 岡野 弘彦 選 】 


   三月の小さな駅の上り線   鶴岡市  広瀬  弘

三月、故郷の小さな駅から都会行きの列車に乗る。 思わず列車と書いたが、新幹線や電車ではこの出発の哀愁が出ないのである。 
                               【 正木 ゆう子 選 】


   惚けたらな頼むとバレンタインの日   羽曳野市  中井 文也

若い人から義理チョコを貰って 「もしも俺が惚(ぼ)けたら、その時は頼みます」。 高齢化社会ではこんな光景もあろう。 「な」が面白い。
                               【 矢島 渚男 選 】 


   ふる里はほろ苦きもの蕗のたう   川崎市  深田 典征

フキノトウのほろ苦さが古里の思い出を呼び起こす。だが、そこは自分にとってほろ苦いところだという。室生犀星の詩を思わせる。 【 矢島 渚男 選 】


   節分の鬼より強き鰯かな   新居浜市  鈴木 武夫

節分に棘(とげ)のある柊(ひいらぎ)や臭いのある鰯(いわし)の頭などを 門口に挿しておくと、鬼がやってこないという呪術的な風習をコミカルに詠う。「鬼より強き」の断定が見事。              【 矢島 渚男 選 】


   目つむればそれつきりやも日向ぼこ   青森市  小山内 豊彦

こんな気持ちのまま それっきりであればいいような、いや そうならないように目を開けていなくてはと思われるような、そんな日向ぼこ。なんと心地のいい日向ぼこだろう。                     【 宇多 喜代子 選 】


   生きるとは耕すことや耕せり   松戸市  倉林 高次

大地を耕しては作物を得て、生きていく。 農は人間として誇るべき仕事のひとつである。「耕す」と言う動詞を二度繰り返すことも、反復の多い作業にふさわしいのでは。                      【 小澤  實 選 】



  咲ききって吹かるるままに散るさくらともに仰ぎて戦友二人
                        埼玉県  沢野 朋吉

   ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 【 小池  光 選 】



   祖母ひとり大きな家に春を待つ   安曇野市  曽根原 幸人

祖母のみを残してみな「大きな家」から別のところに住んでいるのだろう。
心身ともにこの家に住みなれた祖母の風貌が見えるよう。冬を過ごした祖母の様子の伝わる句だ。                 【 宇多 喜代子 選 】


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