目についた記事を、その時々に書き込むつもりです。
蛍とぶその後の三角兵舎かな 岡山市 国定 義明
若い方には句意不明といわれそうだが、「三角兵舎」とは 藁の寝床が穴に沈むような、粗末な小屋型の兵舎。 たとえば特攻隊の出撃基地の知覧に現存する。そのことを残すだけで鎮魂になるような句。【 宇多 喜代子 選 】
若い方には句意不明といわれそうだが、「三角兵舎」とは 藁の寝床が穴に沈むような、粗末な小屋型の兵舎。 たとえば特攻隊の出撃基地の知覧に現存する。そのことを残すだけで鎮魂になるような句。【 宇多 喜代子 選 】
青葉木菟五年聴かざり来ずなりぬ 上尾市 山田 正雄
アオバズクは渡来する夏の梟。毎年その声を楽しみにしていたのに来なくなった。今年もまだ聴けない。「五年」の具体性がよい。 【 矢島 渚男 選 】
アオバズクは渡来する夏の梟。毎年その声を楽しみにしていたのに来なくなった。今年もまだ聴けない。「五年」の具体性がよい。 【 矢島 渚男 選 】
姓も名も只の凹みに墓洗う 東京都 森 彰一郎
生前を知らない人の古い墓石だろう。それでも有縁の人と想いつつその墓を洗う。 【 宇多 喜代子 選 】
生前を知らない人の古い墓石だろう。それでも有縁の人と想いつつその墓を洗う。 【 宇多 喜代子 選 】
葮簀してはるかなるものはるかにす 川崎市 沼田 広美
「はるかなるもの」とは海か、空か、はたまた死者の住む彼の世か。
葮簀(よしず)で空間を区切ることで、さらに遠く感じられる。
葮簀という「もの」が思いを際立てている。 【 小澤 實 選 】
「はるかなるもの」とは海か、空か、はたまた死者の住む彼の世か。
葮簀(よしず)で空間を区切ることで、さらに遠く感じられる。
葮簀という「もの」が思いを際立てている。 【 小澤 實 選 】
駄菓子屋の葮簀の奥は抜け道に 和歌山市 針谷 国光
駄菓子を買いに来た子は目的を果たすと、店の奥の葮簀 (よしず) の脇をすり抜けて遊びに行く。 別の世界へ行く中継点として、駄菓子屋はある。
【 小澤 實 選 】
駄菓子を買いに来た子は目的を果たすと、店の奥の葮簀 (よしず) の脇をすり抜けて遊びに行く。 別の世界へ行く中継点として、駄菓子屋はある。
【 小澤 實 選 】
白地着て写真の父の丸眼鏡 敦賀市 川北 寿子
父の遺影だろう。元祖の眼鏡は丸い。それを見る度に時代の移り変わりを思うのだ。もう白地の着物を見ることも稀(まれ)になった。
「 白地着てこの郷愁のどこよりぞ 楸邨 」 【 矢島 渚男 選 】
父の遺影だろう。元祖の眼鏡は丸い。それを見る度に時代の移り変わりを思うのだ。もう白地の着物を見ることも稀(まれ)になった。
「 白地着てこの郷愁のどこよりぞ 楸邨 」 【 矢島 渚男 選 】
この先はひとりで行けと道をしへ 東京都 山口 照男
案内はここまで。後は自分で。道教えは斑猫(はんみょう)という2センチほどの甲虫。山道などで出会うと、人に先立って飛ぶ。斑(まだら)模様の色彩が美しい。でも、なぜ猫なんでしょう。 【 矢島 渚男 選 】
案内はここまで。後は自分で。道教えは斑猫(はんみょう)という2センチほどの甲虫。山道などで出会うと、人に先立って飛ぶ。斑(まだら)模様の色彩が美しい。でも、なぜ猫なんでしょう。 【 矢島 渚男 選 】
尾を切れど蜥蜴を猫は容赦せず 川崎市 堀尾 一夫
普通猫は蜥蜴(とかげ)の切断した尾に夢中で、蜥蜴本体はみのがすことになっている。しかし、捨て身の蜥蜴の計略に気付いてしまった猫もいるのだ。もはや蜥蜴は逃れられまい。 【 小澤 實 選 】
普通猫は蜥蜴(とかげ)の切断した尾に夢中で、蜥蜴本体はみのがすことになっている。しかし、捨て身の蜥蜴の計略に気付いてしまった猫もいるのだ。もはや蜥蜴は逃れられまい。 【 小澤 實 選 】
南天は花の盛りも地味なるを梅雨の止み間にしみじみと見き
常総市 柴 春枝
南天は初夏に白色の花を咲かせる。 冬の赤い実と比べると地味だが、 梅雨空の下で見る白い花は可憐(かれん)な雰囲気を持っている。
「地味」ならぬ「滋味」を湛えた一首。 【 栗木 京子 選 】
常総市 柴 春枝
南天は初夏に白色の花を咲かせる。 冬の赤い実と比べると地味だが、 梅雨空の下で見る白い花は可憐(かれん)な雰囲気を持っている。
「地味」ならぬ「滋味」を湛えた一首。 【 栗木 京子 選 】
むきだしの命はねたり青がえる 小沢昭一 ( おざわ しょういち )
蛙(かえる)だからこその一句。なぜなら蛙は生涯、裸だから。ほかの動物は毛皮や鱗(うろこ)におおわれている。裸の動物もいるが、蛙ほど愛らしくない。人間にしても「むきだしの命」といえるのは赤ん坊と子どもくらい。大人の人間の蛙への憧れの句。 【 '13.07.28 四季 ・ 長谷川 櫂 選 】
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白魚の魂までも見えており 伊庭 なみ江
しらうをの中まっすぐに管とほる 東京都 望月 清彦
蛙(かえる)だからこその一句。なぜなら蛙は生涯、裸だから。ほかの動物は毛皮や鱗(うろこ)におおわれている。裸の動物もいるが、蛙ほど愛らしくない。人間にしても「むきだしの命」といえるのは赤ん坊と子どもくらい。大人の人間の蛙への憧れの句。 【 '13.07.28 四季 ・ 長谷川 櫂 選 】
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白魚の魂までも見えており 伊庭 なみ江
しらうをの中まっすぐに管とほる 東京都 望月 清彦