目についた記事を、その時々に書き込むつもりです。
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    孫が来て子が来て盆の人が来て   枚方市  船橋 充子

これが 「盆」 というものだろう。静かな暮らしが子や孫や盆の客で膨れ上がる。  平素の幾倍もの話し声が飛び交う。下五のつづきに嬉しさと同量の疲れが見えている。                               【 宇多 喜代子 選 】


   与那国の放牧の馬ゆったりと草をはみつつ台湾をみる
                        横須賀市  白田 富代

与那国島は日本の一番西の島で、台湾への距離は110km。 面積30平方㌔に足らぬ小島。領土問題が尖鋭になっている現在、島の平安を祈る心は深い。
                                    【 岡野 弘彦 選 】


  祖父(おほちち)の遺せし旧家とり壊すねむれる家具を起こさぬように
                              角田市  豊岡 浩一

現代の都会生活をする人には、この歌の下の句に共感がないだろうが、本来は、家にも家具にも古くなると魂が宿ると信じられていた。その霊に対する敬虔な思いである。                                 【 岡野 弘彦 選 】


    日傘より影が出てゆく新宿区   名取市  里村  直

白くて暑い日差し、都市の雑踏。 人間の黒い実態のない影。 なんだか、無音の世界のミステリーのよう。                    【 宇多 喜代子 選 】


   八月に生まれ八月疎ましき   東京都  樋口 ふさ子

お盆、原爆忌に敗戦日のある8月は供養、鎮魂の月。 と同時に、帰省や休暇で周辺のざわつく月でもある。どの日も暑い。そんな8月に誕生日がくる。作者の気分が、なんとなくわかる句。                      【 宇多 喜代子 選 】


   終戦日六たす九と記憶せり   平塚市  原  道雄

6日は広島、9日は長崎の原爆忌。足すと15日の終戦日になることに初めて気がついた。最近は終戦日を知らない若者がいると聞く。      【 正木 ゆう子 選 】


   無期刑に病んで真昼の月を仰ぐ軒すだちゆくつばめの二番仔
                            仙台市  長岡 義宏

しばらく投稿が無かったが病臥中だったらしい。燕は二度仔を生むと、同じ無期刑の老囚から聞いたと記してある。私もはじめて知ったが何となく胸に沁む話である。
                                    【 岡野 弘彦 選 】


  米寿なる父が曾孫に自慢せり 「どうだ悠吾は歯を外せるか」
                         匝瑳市  椎名 昭雄

入れ歯を外して曾孫の自慢する。どうだ、すごいだろう。おじいちゃんすごいね。なんともしあわせな老境である。曾孫の名前が入っているところが臨場感あっていい。
                                     【 小池  光 選 】


    一匹となりし金魚に呼びかける   宍粟市  宗平 圭司

夜店などで買ってきた金魚が、とうとう最後の一匹になってしまった。作者がなんと言ったのか想像させる。「お前もか」もそのひとつ。 【 矢島 渚男 選 】


  入棺のたつぷり入るる青田風   鶴岡市  広瀬  弘

亡くなったのは、たぶん田仕事をして生涯を終えた人であろう。この世を去る最後の時、折からの「青田風」を持たせて見送る。かくありたしと思わせる句だ。                            【 宇多 喜代子 選 】


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