目についた記事を、その時々に書き込むつもりです。
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    一羽来て二羽来て三羽初雀   鶴岡市  広瀬  弘

1+2 は3、という当たり前の単純さが面白い。そこに新年の雀である目出度(めでた)さを感じている。なかなかベテランの思いつかぬことだ。子供のような句に見えた、子供には決して出来ないだろう。                 【 矢島 渚男 選 】


    深夜バス待つ新宿に寒の月   三条市  星野  愛

新宿始発のバスターミナルで深夜の高速バスを待っている。それだけのことなのだが、深夜 ・ 新宿 ・ 寒の月という三つの言葉の生む景が心情に染み入る。
                                  【 宇多 喜代子 選 】


   愛鶏も二歳の春を長鳴けり   富士吉田市  渡辺 金作

こんなに愛情を込めて詠まれた鶏の句は初見。世の中には「声良鶏」という種類があるそうだから、それだろうか。二歳という具体性がいい。    【 正木 ゆう子 選 】


   七草を唱えて粥の美しき   貝塚市  長谷 益美

せり ・なずな ・ ごぎょう ・ はこべら ・ ほとけのざ ・ すずな ・ すずしろ、これぞ七草。五七五七七の短歌のリズム。唱えれば、味も格別。      【 正木 ゆう子 選 】


  さあこれで私は遠くまで行ける本日初めて席譲られて
                     東京都  徳山 麻希子

なんて前向きな老いの歌だろう。初句のサバサバした雰囲気もいい。若作りなんていう無理は、もうしなくていいという開放感も感じられる。    【 俵  万智 選 】


   短歌あれこれ     
      意識を持って観察する     梅内 美華子

短歌作りで「ものをよく見る」ということが言われます。短歌と言う短いポエムを書こうとする意識を持った「歌人目線」で観察しましょう。例を挙げます。 
   

   円形の和紙に張りつく赤きひれ掬われしのち金魚は濡れる
                          吉川 宏志  『 青 蟬  』

一読して私は「ええ?こんなことを見ていたの」と驚きました。金魚は水中では当然濡(ぬ)れているのですが、外側にいる人間は水の外に出た時に「濡れ」ているのを肉眼で捉えたのです。

それから<金魚すくい>という名を出さず、その場面の具体的な物や動きを細かく丁寧にスケッチしています。 ものの名は短い言葉ですぐに情報を伝達しますが、一方で一般的な総括されたイメージしか手渡しません。

普段と角度を変えて、型や枠を少し外してみましょう。 すると気が付かなかった、考えもしなかったことを捉えられるかもしれません。 それは読む者にも新しい発見をくれます。
                         【 短歌あれこれ 14.02.03 読売新聞 】


   はつひのでいっぱいまたせてでてきたよ
       茨城県 神栖市立軽野東小学校1年  五木田 夏希

「いっぱいまって」ではなく「またせて」としたところがポイントです。人間たちを待たせることなど、おかまいなしの「はつひので」が、堂々とのぼっていくさまが見えてきます。
                【 ’14.02.01 KODOMO俳句 高柳 克弘 選 】


   こともあろうになまはげの戻り来る   秋田市  中村 栄一

以外にもなまはげが立ち戻ってきた驚き。なまはげは男鹿半島の大晦日(おおみそか)の神事。家々を悪い子はいないかと鬼たちが回って歩く。それが去ってホッとしていた赤ん坊がまた泣き出した。                   【 矢島 渚男 選 】


   誰言ふとなく禁煙の日向ぼこ   堺市  中村 吉和

「禁煙」 がここまで浸透したかと思い、愛煙家たちの落胆の表情を想像する。 「誰言ふとなく」に昨今の禁煙あたりまえの雰囲気が滲(にじ)む。
                                  【 宇多 喜代子 選 】


   狼のこゑをこころに斧始   津市 中山 道春

日本では絶滅して久しい狼(おおかみ)と、希少となった山仕事の取り合わせ。 自然を何よりも大切に生きてきた日本人の魂を惜しむ思いが込められた、丈高い新年詠である。                          【 正木 ゆう子 選 】


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