目についた記事を、その時々に書き込むつもりです。
[112]  [113]  [114]  [115]  [116]  [117]  [118]  [119]  [120]  [121]  [122
  ひと冬の雪に圧(お)されて畑土はしまりて重し鍬ふかく鋤く
                           青森市  安田 渓子

雪国の雪がようやく解けて、さあ春耕を始めようとする頃の畑土の感触が伝わってくるようで、感覚の豊かないい歌だ。下の句の実感、殊に「鍬(くわ)ふかく鋤(す)く」がいい。                               【 岡野 弘彦 選 】


  わが内に体力いまだ残れるか髭(ひげ)髪爪が容赦なく伸ぶ
                            京都市  高橋 雅雄

若い60・70は気にもしなかったが、80代・90代になって毛髪の伸びの早いのが気になる。 殊に耳の毛や鼻毛の伸びがむさくるしい。 長寿の相と言うべきか。 
                                   【 岡野 弘彦 選 】


  シチュー鍋ゆっくりゆっくりかき回す 秘薬を造りいるかのように
                          東京都  小菅 暢子

秘薬を造るようにという比喩に意外性がありまたリアリティもあっておもしろい。料理とはみな一種の秘薬造りともいえる。                【 小池  光 選 】


   母の日や母といち日過ごしけり   三条市  星野  愛

いろいろな 「母の日」の過ごし方があるが、作者はただ母と一日を過ごした。 ただ穏やかに母の傍らにいる。いいなぁと思う。           【 宇多 喜代子 選 】


   もう住めぬ里に咲き散る桜かな   福島市  二宮  宏

作者の住所が書かれていなかったら、「もう住めぬ」 は、個人的な何かだろうと思うだろうが、福島とあるだけでそうではなさそうだと納得する。それでも花は咲き散る。  
                                   【 宇多 喜代子 選 】


    湯に入るるごとげんげ田に子を立たす   東京都  西出 真一郎

花を湯に喩えた句といえば森澄雄の「ぼうたんの百のゆるるは湯のやうに」があるが、揚句は別の趣。子供が登場したことで、童話的に。      【 正木 ゆう子 選 】

 【 注 】 げんげ : 紫雲英 蓮華草 れんげ草 げんげん 五形花 げんげ田


   居間に入れば青大将が交(つる)みおり   福島県  黒沢 正行

青大将は屋敷神にもなる大人(おとな)しい蛇だが、こんな場面に遭遇したら誰だってびっくり仰天する。向こうも驚いたことだろう。蛇は交尾したら容易に離れられない構造になっている。大きな雌が小さな雄を引きずるように逃げたそうである。
                                    【 矢島 渚男 選 】


   隣り田の田螺(たにし)気になる田螺かな   市川市  杉森 日出夫

田螺が隣の田圃(たんぼ)の田螺を気にしているなんて、おかしなことを考えたもの。蛙(かえる)なら跳んで行けるが田螺には ―たとえ恋をしたとしても― 無理な話。でも人間にもあることで、切ない寓意(ぐうい)ではなかろうか。 【 矢島 渚男 選 】


   いつの間にさくら色から空色へ   和歌山市  中尾 結樹

「いつの間に」 が生きている句だ。 晩春から初夏へ移行する季節を 「さくら色」 「空色」 で巧みに表現した句である。             【 宇多 喜代子 選 】


   草刈の音して草のにほひけり   立川市  本橋 ひでを

草刈を聴覚と嗅覚とで捉えているわけだ。そのふたつの感覚の奥に、きびきびと草を刈りつづけるひとの姿も立ち上がって来る。             【 小澤  實 選 】


カレンダー
10 2024/11 12
S M T W T F S
1 2
3 4 5 6 7 8 9
10 11 12 13 14 15 16
17 18 19 20 21 22 23
24 25 26 27 28 29 30
ブログ内検索
最新コメント
[12/31 越中之助]
[12/31 越中之助]
[12/10 ?]
[10/30 読売読者]
[09/06 榎丸 文弘]
最新トラックバック
バーコード
フリーエリア
ゲイ無料総合サイト
カウンター