目についた記事を、その時々に書き込むつもりです。
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   神が住む畑の辺りの草を刈る   帯広市  吉森 美信

田にも畑にも住む神。この神が在してこそ実りに恵まれる。そんな神人共生をさりげなく認識した句だ。草を刈るという具象がいい。        【 宇多 喜代子 選 】


   仏法僧魑魅魍魎も耳澄ます   豊橋市  河合  清

化物どもが、「仏法僧」と鳴く鳥の声に耳を澄ませている。あやかしも仏縁を得て、成仏したいらしい。 深山の神秘の世界。 この仏法僧は声の仏法僧、木葉木莬(このはずく)のこと。                         【 小澤  實 選 】


   薔薇を買ふ少年の眼のひかりかな   可児市  羽貝 昌夫  

少年の眼の光は何によるものか。薔薇(ばら)の美に魅入られたのか。 それとも、意中の少女に贈ろうとしているのか。謎こそが、魅力の源泉。    【 小澤  實 選 】


  ほーほ―と裏山に鳴く青葉木莬(ずく)百寿の母は逝きたまひけり
                            香取市  嶋田 武夫

茂りはじめた青葉の山にこもって、「ほーほー」と二声ずつ区切って呼びかけるように鳴く鳥の声。高齢の母を亡くした作者には、その哀切なひびきがたまらないのだ。
                                    【 岡野 弘彦 選 】


   わくわくす高が目高の卵見て   町田市  枝沢 聖文

部屋の水槽で目高を飼っている。ある日、藻の中に卵を見つけて、わくわくしている自分。もっと大きな事に感動したいのに、などと思うのだが、小さな目高の営みだって宇宙の不思議に通じているのだ。                【 矢島 渚男 選 】


   出迎へし犬全身の梅雨湿り   町田市  風間 良富

密生した毛の一本一本が湿り気を帯びて、撫(な)でてやった手が濡れるほど。 存在感・質感は俳句の要。作者がそれを五感で確かに感じているからこそ、読者にも伝わる。                               【 正木 ゆう子 選 】


   手の届くところにはなし蓮の花   東京都  望月 清彦

遠くで眺めるのもいいが、近くでも見てみたい。 しかし蓮の花というものは、何故かいつも手の届かない処(ところ)にしか咲かないのだ。 確かに。 【 正木 ゆう子 選 】


    父の日や珈琲ミルの挽き応へ   仙台市  松岡 三男

父の日の贈り物の珈琲(コーヒー)ミル。 豆を挽(ひ)きながら、手に伝わる感触を楽しむ。すべてを「挽き応へ」に代弁させている。        【 正木 ゆう子 選 】


   爪切つて指軽くなる薄暑かな  多摩市  福田 澄子

薄暑は真夏になる前の暑さで、暑くてたまらないという暑さではない。そんな時季に爪を切った時の気分の軽さをうまく言い当てている。     【 宇多 喜代子 選 】


  「オレオレ」のあと「生きてるか?」と聞く奴は俺の息子に間違いはなし
                              交野市  遠藤  昭

オレオレ詐欺ならばたしかに「生きてるか?」とは続かないだろう。乱暴なもの言いがいかにも息子と父の会話。                     【 小池  光 選 】


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