目についた記事を、その時々に書き込むつもりです。
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  われといふ死者のとなりに昼寝覚   武田  肇( たけだ はじめ )

昼寝から覚めると絶命した自分が隣に横たわっていた。眠りはじつは魔の時間である。人は眠るとき、しばし自分と別れるのだが、目覚めるとき、もとの自分に戻れると信じているから安らかに眠れる。ただし、そうでないこともある。
                      【 '14.08.14 四季 ・ 長谷川 櫂 選 】


  草を取る草に文句を言ひながら   東京都  斎木 百合子

草に文句を言ってもしょうがない。しかし 根深く繁茂する草を取るのはたいへんで、悪口が口をついて出てしまうのである。 草取りの労苦が描きとられている。 
                                    【 小澤  實 選 】


【 矢島 渚男 選 】
    11時2分心に文字盤長崎忌   長崎市  谷川 博美


  奥つ城はテニスコートの側にあり弾む声聞く母の命日
                       埼玉県  田中 広美

「奥つ城(き)」 は墓所のこと。すぐ近くにテニスコートがあって、華やかさが伝わる。亡き母も楽しく声を聞いているのだろうか。           【 栗木 京子 選 】


  
  両手挙げYMCAのCの字で青森県は地図に踊りぬ              
                        仙台市  岩間 啓二

意表をつく楽しい比喩だが、なるほどと思わせられる。すべてが 「踊りぬ」 に向かう構文が躍動感を出している。                   【 俵  万智 選 】

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【 08.02・11 宇多 喜代子 選 】
  菱形に北海道の凍てにけり   桶川市  小林 茂之


    白シャツの釦を開けて遅刻中   仙台市  勝  美彰

「遅刻中」が意表をつく。職場へ急いでいる途中か。「釦(ぼたん)を開けて」という描写が面白い句になった。噴出す汗を拭きながら扇子を使ったりして・・・。
                                    【 矢島 渚男 選 】


   伸び上がり沖まで祓う海開き   橿原市  堀江 重臣

海開きの神事。普通の姿勢で祓(はら)った後、伸び上がるのは、さらに遥(はる)かな沖を祓うため。腕の動きも大きいのだろう。わずかな姿勢の違いに込められた意味が面白く伝わる。                         【 正木 ゆう子 選 】


  わが名をばホタルと呼びし友ありて75年の歳月が過ぐ
                          所沢市  阿部  至  

作者の名はイタル。 幼い友達が面白がってホタル、ホタルと呼んでいた。 それから75年。あの友はいまどうしているのか。              【 小池  光 選 】


  家につくまでにアイスが溶けていて夏より遅いわたしの歩み
                         所沢市  加納 舞子

アイスが溶けたことを、歩く早さが夏のスピードに負けたから、と捉えたところがユニーク。結句は「歩幅」を添削しました。                【 俵  万智 選 】


   餡蜜に付き合ふ夫となり果てぬ   前橋市  豊嶋 秋生  

いわゆる「女子供」の好物に、辛党で鳴らした自分がつきあうなんて。おまけにこれが美味しいときている。情けないやら、幸せやら。        【 正木 ゆう子 選 】


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