目についた記事を、その時々に書き込むつもりです。
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   ハンカチの折り目正しきこと涼し   流山市  久我 渓霞

「ハンカチの折り目」だけで、暑さを一掃した面持ちのきちんとしたたたずまいが見えてくる。                              【 宇多 喜代子 選 】


   一日の寝てゐるときも夏休み   つくば市  小口 智英

何とも言えずおかしい。 折角の夏休み、できるだけ起きて あれこれ楽しまなくては勿体ないと思う。 ほんとうは寝ているときこそが夏休みなのかもしれないのに。 
                                   【 宇多 喜代子 選 】


   扇風機首を振る度やや移動   塩尻市  神戸 千寛

情けない扇風機であるが、見たことがありそう。 台が小さくしっかりしていないのだ。 ただ、まことに一心不乱に稼動していることはわかる。どこか昭和の匂いもする。 
                                    【 小澤  實 選 】


  親子づれは一度閉めたるエレベーター老いたる我に開けて待ちおり
                               所沢市  近藤 のり子

一度閉まったエレベーターをわざわざまた開けて待っていてくれた親子。親切が本当にうれしい。子どもはこういう体験から、ごく自然に思いやりや礼儀を学ぶのだろう。
                                    【 栗木 京子 選 】


   この街は寂しすぎると帰省の子   一関市  木村 成幸

帰省して夏休みを過ごしている若者が、ポツリと率直な感想をもらした。大都市圏へ人口流入が続き、地方都市は衰微(すいび)するばかりという悲しい現状が背後にある。                              【 矢島 渚男 選 】


   癒ゆるなき兄と夕焼け見てゐた日   東京都  吉田 かずや  

語るでもなく、ただ並んで夕焼けを見ていた。悲しくなかったはずなのに、なぜかあの時を思うと、胸が温かくなる。大切な思い出。          【 正木 ゆう子 選 】


  落し物気付かずかけだす乙女子に十年ぶりの大声をあぐ
                        清瀬市  石井  孝

親切心から思わず大声で呼び止めていた。 作者は温厚な人なのだろう。
十年ぶりの大声が怒声や悲鳴でなくてよかったですね。    【 栗木 京子 選 】


   三代の声を枕の昼寝かな   東京都  をがは まなぶ

盆帰省でのひとこまか。 三代にわたる血縁が集まった実家。 久々に会う皆の声を聞きながら、涼しい風に眠りかけている作者である。      【 正木 ゆう子 選 】


   新しき噂も運ぶ団扇かな   門真市  皆木 多恵子

寛(くつろ)いだ場での噂(うわさ)。 夕涼みか、端居か。 この場の小道具として、「団扇(うちわ)」が大きな効果をあげている。         【 宇多 喜代子 選 】


  風鈴の高さに風の吹きいるか届かぬ風を音色にて知る
                         茨木市  瀬戸 順治

昼寝だろうか。 風鈴の「高さ」という語で、自分の低さを表現している。 肌ではなく耳で感じる風である。                        【 俵  万智 選 】


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