目についた記事を、その時々に書き込むつもりです。
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  待ちわびて乙女のごとく逝きにけり黄泉路の父よ母をよろしく
                           栃木県  大橋  弘

これもよい歌だ。先に世を去った夫を慕って、やがて後を追った母。そういう両親を持った子の心も歌もあわれで美しい。              【 岡野 弘彦 選 】


  あの夏もこの夏も比べようもなく蝉は今年の夏に止まりぬ
                         松江市  犬山 純子

人間からすると、毎年のように鳴いている蝉(せみ)と思いがちだが、蝉にとっては、一度きりの夏。 上の句に、はっとさせられる。           【 俵  万智 選 】


   何百年経ても8月15日   川崎市  羽根田 明

「同感」である。金輪際または未来永劫(えいごう)と言いたいところを、具体的に「何百年」で抑えた気持ちが伝わる。そこを納得した後の同感である。 
                                   【 宇多 喜代子 選 】


   母の母その母の母砧(きぬた)打つ   枚方市  秋岡  実

「砧打つ」は、かつての女性たちの冬支度の一つ。 この句の「母」は4代までだが、5代6代と遡(さかのぼ)る。今やそんな母も消え、現代の歳時記からも消えた。 
                                   【 宇多 喜代子 選 】


   畳み方ちやんと覚えて浴衣着る   東京都  佐々木 由紀子

初めて浴衣を着るとき、女の子は浴衣の畳み方も同時に教わるものである。洋服にはない平面的な畳み方。合理的かつ美しい。        【 正木 ゆう子 選 】


   畳み方ちやんと覚えて浴衣着る   東京都  佐々木 由紀子

初めて浴衣を着るとき、女の子は浴衣の畳み方も同時に教わるものである。洋服にはない平面的な畳み方。合理的かつ美しい。        【 正木 ゆう子 選 】


  いさぎよく一直線に背は割れてこの世のぞきぬ蝉の目の玉
                          常総市  渡辺  守

蝉(せみ)が羽化する変化をまざまざと見た幼い日の胸のときめき。この一首は その感動を私の胸に久しぶりによみがえらせた。            【 岡野 弘彦 選 】


   生涯の余韻のごとし昼寝覚   さいたま市  藤井  恵

短時間ながらも熟睡した昼寝後の茫々(ぼうぼう)とした感じを 「生涯の余韻」 と言い切った大きな句である。                   【 矢島 渚男 選 】


   小遣ひをもらひて涙生身魂   香取市  関  沼男

生身魂(なまみたま)は今日では高齢者をさす言葉になってきたが、古くは「生見玉」で、子供に贈るお年玉とは逆に、生きている老父母に贈り物をしたり饗応することだった。この句はそうした本来の意味に添っている。     【 矢島 渚男 選 】


   水撒きのまん中に空降りてくる   東京都  大高 宏充

ホースでの散水か、それとも柄杓 (ひしゃく) か。 空に向かって大きく弧を描くように水を放つ。 その輪の中に空のほうが降りてきた。 空に水を近づけた感覚を大胆に表現した句。                            【 宇多 喜代子 選 】


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