目についた記事を、その時々に書き込むつもりです。
[103]  [104]  [105]  [106]  [107]  [108]  [109]  [110]  [111]  [112]  [113
  標本の蝉並べれば罪の香のそこはかとなく箱に漂う
                       埼玉県  正木 克美

子供時代の夏休みの思い出か。宿題の昆虫標本。ひとつひとつがわたしがいのち奪ったもの。そう思えばそこはかとない罪の香が漂うようであった。みずみずしい少年の心。                                 【 小池  光 選 】


  乳飲み子はなにもしてないじっちゃんと目が合うだけでけたけた笑う
                             東京都  高橋 よしえ

必死にあやしても乳飲み子が反応しないことがある。 だが、 あくまでも自然体の「じっちゃん」には笑う。 目と目で心が通じ合う 祖父と孫の関係。 とても素敵に思える。                                【 栗木 京子 選 】


  福島の友の稲田は稔りしか実をつけし草引きつつ思う
                       所沢市  鈴木 照興

災害地の福島にあって稲作に執着する友を思う作者の心は、その下の句の表現にこまやかににじみでている。                   【 岡野 弘彦 選 】


   かばかりの風大仰に秋桜   泉佐野市  布野  寿

少しの風にゆらゆらと揺れるコスモスの揺れ加減を 「大仰」 ととらえた句。 クスリと笑える俳句のおかしさだろう。                  【 宇多 喜代子 選 】

   ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

   身の丈の風を呼び込み草の花   秋田市  中村 栄一

この句にも布野さんの句のコスモスに通うところがある。秋の野の花は芒(すすき)、吾亦紅(われもこう)、の硬派からコスモス、撫子(なでしこ)、桔梗(ききょう)など、それぞれの身の丈に合った揺れで立つ。           【 宇多 喜代子 選 】


  本日は何月何日何曜日か答える大正生れは眠い
                市原市  横尾 おさむ

認知症の診断のとき月日や曜日を問うことがある。余裕をもって答えながら作者は少々面倒臭く思っている。下句が洒脱(しゃだつ)だ。      【 栗木 京子 選 】


  今はまう顔もおぼろになり果てし兵らと歩く黄河のほとり  
                       茅ヶ崎市  関  広範  

凄(すご)い歌だ。作者は92歳。日中戦争で転戦した日を回想しての作で、日野葦平の「麦と兵隊」の時期よりもっと後の体験だろう。それだけに一層胸に迫る。 
                                    【 岡野 弘彦 選 】


   電話は電話手紙は手紙爽やかに   大阪市  大塚 俊雄

電話や手紙が好きで、メールは苦手とは書いてないが、そんな風にも読める。どんな手段であろうと、連絡のあることは嬉(うれ)しいこと。    【 正木 ゆう子 選 】


  転生をわが願ふなりあまざかるひなの空舞ふ鳶となりたき
                        城陽市  相原 洋次 

「あまざかるひな」 は遠く離れた異境。 わが次の世は、遠い異境の空を舞う鳶   (とび)となりたいという。古語が生きて使われた。        【 岡野 弘彦 選 】


 「お名前を書いてもらつてもいいですか」さうではなくて「書いてください」
                       瑞穂市  渡部 芳郎

最近やたら過剰に丁寧なもの言いが日本語に流通している。過ぎたるは及ばざるが如しという名言もある。作者に同感。              【 小池  光 選 】

  「 書いてください」では失礼だと思います。 「お書き(ご記入)いただけますか」
                    < 発想は、下の歌の模倣だと思います >

   ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 「菅様でよろしいですか」よろしいです「菅様ですか」でよろしいけどね
                        枚方市  菅  道子

最近では「よろしかったですか」という表現も聞く。丁寧すぎることへの煩わしさが、ユーモアたっぷりに歌われた痛快な一首。【 13.08.26 俵 万智 選 】


   夏は死も小(ち)さく埋没する都会   札幌市  田口 和子

死は季節を問わないが、厳しく慌ただしい夏の都会が、弱者にとって非情であるとは言える。年間3万人という自殺者の数を思わずにはいられない一句である。
                                   【 正木 ゆう子 選 】


カレンダー
10 2024/11 12
S M T W T F S
1 2
3 4 5 6 7 8 9
10 11 12 13 14 15 16
17 18 19 20 21 22 23
24 25 26 27 28 29 30
ブログ内検索
最新コメント
[12/31 越中之助]
[12/31 越中之助]
[12/10 ?]
[10/30 読売読者]
[09/06 榎丸 文弘]
最新トラックバック
バーコード
フリーエリア
ゲイ無料総合サイト
カウンター